骨粗しょう症について

医療コラム

2019.11.05

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症をご存知ですか。骨粗しょう症は骨の強さが低下する病気です。骨の強さは年齢とともに誰しも徐々に低下していきますが、その程度により治療が必要となります。なぜなら、骨の強さが低下すると軽微な外力で骨折することが起こるからです。症状が出にくく、骨折して初めて自分が骨粗しょう症である、と気が付かれることも再々あります。中高齢の方で、体重が軽い人や若い頃と比較して身長が4㎝以上短縮した、背中や腰が痛む、背中や腰が曲がるといった体の変化や症状のある人は骨粗しょう症の可能性があります。

WHO(世界保健機関)からは、両親の大腿骨近位部骨折歴、現在の喫煙習慣、アルコールの多量摂取習慣などが骨粗しょう症、あるいは骨粗しょう症性骨折の危険因子として提唱されております。

高知県は1人当たりの飲酒量が全国一です。過度の飲酒は、腸からのカルシウムの吸収を抑制し、尿からカルシウムの排泄を促進する作用があり、骨粗しょう症のリスクを高めます。また、飲酒による転倒も骨折に影響していると考えられます。実際、急性期病院在職中は飲酒し転倒骨折の治療に当たることも度々経験しました。よって、過度に飲酒される中高齢の方は、肝臓などの内科的な検査だけでなく、骨の検査も受けていただくことが望ましいと考えます。

骨粗しょう症の診断

では、骨粗しょう症の診断はどのようにされるのでしょうか。骨粗しょう症には原発性骨粗しょう症と続発性骨粗しょう症がありますが、これは、続発性骨粗しょう症の原因を認めないことを前提にした原発性骨粗しょう症の診断基準です。骨粗しょう症の診断は、骨密度と脆弱性骨折(軽微な外力で発生した骨折)の有無で診断されます。すでに大腿骨や背骨の骨に骨脆弱性骨折を認める人、もしくは大腿骨や背骨の骨以外に骨脆弱性骨折を認め、骨密度が若い頃と比較し80%未満の人、骨密度が若い頃と比較し70%未満の人は、原発性骨粗しょう症と診断されます。骨密度の測定には、全身のエックス線撮影画像の評価が可能なDXA(デキサ)法、手のエックス線撮影画像を用いたMD法、かかとの骨などで測定する超音波測定法があります。そのなかでも、DXA法による腰椎と大腿骨近位部両者の測定をすることが推奨されおり、当院では測定可能な機器を導入しております。

骨粗しょう症の予防

骨粗しょう症と診断されなかった場合は、今後骨粗しょう症にならないよう予防することが大切です。骨粗しょう症の予防に運動が推奨されております。歩行や太極拳などの軽い運動は腰の骨が、また、ジョギング・ダンス・ジャンプなどの強い運動は大腿骨が強くなります。また、食事ではカルシウム、ビタミンD,Kの適度な摂取が必要です。推奨摂取量は、カルシウムは700~800㎎(例えば、鮎1.5匹)、ビタミンD 15~20μg(例えば、しらす干し20g程度)、ビタミンK 250~300μg(例えば、納豆1パック程度)とされています。ビタミンDは紫外線に当たると皮膚で合成されることも分かっており、1日約15分程度の適度な日光浴が必要とされています。最近、これらビタミンの栄養状態を血液検査で推定することが可能となりました。心配な場合は、ご相談ください。また、リン、食塩、カフェイン、アルコールなどの過剰摂取はお控えください。

骨粗しょう症の治療

薬による治療

骨粗しょう症と診断された場合は、予防と同様に運動や食事も非常に大切ですが、薬による治療の開始を考えましょう。

実際に治療を開始する前には、血液検査で骨代謝マーカーの測定が行われるようになりました。骨代謝マーカーは骨粗しょう症の治療薬の選択や治療効果の判定のために役立つと考えられています。骨粗しょう症に対する治療薬には、大きく分けると骨吸収抑制薬と骨形成促進薬があります。骨代謝マーカーによる評価にもとづき、骨代謝が低い場合は骨形成促進薬を、骨代謝が高い場合は骨吸収抑制薬を選択するなどの判断に使用したりします。また、骨粗しょう症に対する治療は効果を自覚することが難しく、骨密度検査で治療効果の変化が現れるまで時間がかかることや変化が僅かであることなどから、治療を途中で止めてしまう方がいます。その点、骨代謝マーカーは早期から数値の変化が得られ、薬の治療効果を数値で確認することが可能となり、治療継続のモチベーションに繫がる可能性が考えられます。骨粗しょう症の治療は、治療を継続していただくことが大切です。

最後に

支援・要介護となる方の約10%は骨粗しょう症に伴う骨折が原因です。高知の多くの方に骨粗しょう症を理解していただき、骨折する方が1人でも少なくなるよう、当院では診療とは別に骨粗しょう症について勉強する機会を設けていきます。骨粗しょう症ではないかと思い当たることがある場合は、早目に医療機関で検査を受け、骨粗しょう症ではない場合は予防について、骨粗しょう症の場合は治療についてかかりつけ医と相談していきましょう。

(文章作成にあたり、骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版を参照しております。)